2022.12.16

とある元教員の「ホワイト化」への提言【前編】

前回のコラムでも述べたように、現在の教育現場は問題だらけです。教員の労働条件や労働環境を整えるための制度やシステムの整備が切実に必要です。

「毎日6時間プレゼンがある」状態の教員の業務は、過酷です。私自身、慢性的な頭痛、動悸、吐き気、不眠など日常茶飯事で、理由もわからず涙が止まらなくなることもありました。明らかに心身に異常をきたしていたのです。しかし、休めませんでした。教員は休めないのです。これには、5つの原因が考えられます。

  • 休んだ方が休めなくなる

教員が休む場合、まずその日1日の授業案を休む教員自身(担任)が考える必要があります。代わりに入る先生が授業を進めてくれることはまずなく、ほとんどの場合は復習(プリント)となりますが、その採点や評価も担任の仕事です。さらに学習の進捗に遅れが発生し、その分の授業案の練り直し等が必要になります。休むと負担が増えるのです。

  • ② 周りにめちゃくちゃ迷惑をかける

1日でも休むと学習が遅れ、「隣のクラスはここまで進んでいるのに」と保護者や生徒からの信頼を失うことに繋がります。さらに、テストの日を相学級で統一させていたりする場合は、別のクラスの進捗まで調整しなければならなくなります。

  • ③「ダメな奴」とレッテルを貼られ、嫌われる

教員畑では、夏と冬の長期休暇以外に有給を消化してしまう人は露骨に嫌われがちです。一度レッテルを貼られた人は重要なポジション(担任)を任せてもらえなくなるため仕事量に大きな差が生まれます。しかし、担任と給料は一緒なので「楽をして、給料泥棒」などと周りに思われてしまいがちです。

「仕方ないよ」「みんなでカバーしよう」と考える教員は稀でしょう。みんなギリギリで精神を保っているような状態で、他人に優しくする余裕がないのだと思います。私自身、休む人は「早く辞めてくれ、迷惑だ」と思っていました。学校ごとに職員の定数が決まっており、休む人の代わりとなる正員を補充できないシステムも問題に思います。

  • ④ 信用が回復しない/教員としての能力に悪影響

私が見てきた中での話ですが、一度レッテルを貼られた人の信用回復は難しいです。「鬱で休んでた先生」「他の先生が良かった」等と、保護者や子どもは好き勝手に言います。人間ですから仕方がないことです。しかし、休むことで担任から外されると、担任を何年もやり通すという成功体験が積み上がりません。よって、能力は向上せず、他の教員と圧倒的な実力差が生まれていきます。これにより、さらに重要なポジションは任せてもらえなくなり悪循環に陥るのです。

  • ⑤「子どものため」

教員が休めないのには①~④の理由もありますが、「子どもに迷惑がかかる」「子どもに罪はない」という意識が大きくありました。どれだけ異常があっても、子どもの前では笑顔でいなきゃいけない。今考えれば、想像以上にきついものだったと思います。

後編に続きます。

Written by S.Fujiwara


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