2021.11.19

Lifelong KindergardenとSTEAM

STEAM用の教材を開発に際し、他の企業と話をしていて気が付いたことがいくつかあります。今回はその話をします。

現在、経済産業省が進めているSTEAMライブラリに掲載されているコンテンツ群には
「わくわく」
をキーワードとした「知る」「作る」の両面から学ぶことのできるコンテンツが求められています。これが新しいことにチャレンジし、発想の転換やイノベーションに繋がる基本だという考え方です。これ「Lifelong kindergarden」と同じ発想です。

「Lifelong kindergarden」はマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの教授であるミッチェル・レズニックが著した本です。日本語に訳すと「生涯幼稚園」というところでしょうか。
彼は「創造的な学び」であるクリエイティブ・ラーニングのために必要な要素
プロジェクト(Project)
情熱(Passion)
仲間(Peers)
遊び(Play)

の「4つのP」とし、それが創造的な学びには必須の要素だと説いています。そしてその流れでプログラミング学習用の言語として、日本でも人気になっているScratchを作ったとしています。

「創造的な学習」は何故必要だと考えられているのでしょうか。「Lifelong kindergarden」には中国の清華大学におけるA学生とX学生の話が冒頭で語られています。A学生とは幼少期から優秀な成績(A評価)を取り続けている学生を指しています。彼らは

「優秀で成績もテストの点も高いにもかかわらず、創造的で革新的な精神を備えていない者が多い」

という点が問題だと清華大学の教授は考えたのです。
そこで、リスクを負いながらも新しいことにチャレンジする学生を「X学生」と名付けたというわけです。

これは世界的に同じ傾向にあります。もちろん日本においてもです。どうしても高校受験や大学受験に必要な知識だけを教えることが中心になってしまい、イノベーションが生まれにくくなっています。
「総合的学習の時間」や来年度から始まる「総合的探究の時間」が上手く活用される事が期待されているのです。その際のキーワードが「わくわく」だということです。

ただし注意も必要です。「わくわく」だけに注力してしまうと、どうしても教える内容が児童や生徒の興味関心のあるところだけに集中してしまいがちです。もちろん興味のあるところから学習を進めていくというのは、
「学習へのモチベーション」
という観点からは大変重要なことです。ですが、学習内容が偏ったものになり、バランスを欠くようではダメです。そのバランスを上手く取り、興味関心のあるところからキチンと広げていくという誘導を行う事が、教員に求められているのです。 つまり教員の役割は、ことSTEAM教育に限定して話をすると、児童や生徒の興味を上手く引っ張っていき、さらに欠けている部分を補うように誘導する
「個別学習コーディネーター」
だと言えるでしょう。もちろんそれには大変な知識量を教員に要求することになりますが。

Written by T.T.Yamada


STEAMライブラリに登録されている、街づくりを
テーマにした学習教材


日々の学習と社会を繋げるデジタル教材。
小さな気付きを好奇心に変え、学ぶ意欲を創造する