2022.01.07

ものごとには「レベル」がある

前回は確認テストのレベル調整方法について紹介しました。今回は
「そもそも伝える際にも『レベル』がある」
という話をします。

筆者はながらく大阪市立科学館友の会の会員有志で作るサークルで天文学の基本を教えていました。天文学は非常に幅の広い分野を含んでいます。太陽や月、太陽系の惑星にはじまり、相対性理論やビッグバン宇宙論や宇宙での生命発生まで、一般の人が望遠鏡で観測できるような内容から物理学の理論や数式を駆使しないと理解できない内容、化学や生物学までです。

これ、実はものすごく困ります。
「天文学を学びたい」
という動機を持って集まった有志の方の中には天体写真を撮るのが好きなだけ人から、最新の宇宙論を理解したいという方まで、動機も興味の方向もバラバラの方が集まっているのです。当然前提となる知識量もバラバラです。
「数学?数字を見るのもイヤ」
というレベルの人に宇宙論の話をしても理解するのは無理なのです。実際
「太陽や月ってなんで光ってるの?」
というレベルの方もいました。うん、さすがにそのレベルは中学校の理科で習ったはずだよね?でも
「そんな難しいこと言われても、おばちゃんわからへん」
と言われてしまいました。

今回の話のキモはそういうことです。何かを教えるには相手のレベルに合わせる必要があるのです。そして相手が望むレベルまたは教える側が望むレベルになるためにはどのような教え方とスケジュールを組まなければいけないかを把握することが大変重要です。
当たり前の話ですが、その際には相手の今のレベルを正確に把握し、目標となるレベルとの差を埋める方法を考えます。

これは大学だと入学時のレベルはアドミッションポリシー、卒業時のレベルはディプロマポリシーで決定しています。その間を埋めるのがカリキュラムポリシーなわけです。そしてカリキュラムの進み具合を確認テストでチェックしていきます。もちろんアドミッションポリシーで決められたレベルに達していなければ不合格として入学を拒否します。

企業の場合は入社試験を行いますが、それでも入社時点では能力のばらつきがあります。また配属される部署によっても最終的に求める能力は異なります。ですからその人物の現在の能力や理解度に応じた個別学習や個別指導が必要になります。先ほどの天文学の例に比較的近しいわけです。

ですから教育や研修を行う前にしっかりと現在の能力を把握する必要があります。それこそ
「言葉の意味を知っているか?」
というレベルから始め、仕事や作業の内容や手順を理解しているかというところまで事細かにレベルを見ていきます。その上で企業側が求めるレベルに引き上げるためのカリキュラムを個別で作成するのです。その際に
「この程度は知っているだろう」
など、自社での常識は新入社員にとっては非常識であることを念頭に置いておきましょう。

Written by T.T.Yamada


学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
eラーニングシステム。PC、タブレット、スマホに対応