2022.03.11

地方創生と教育

十年程前に、公営塾の立ち上げと運営に携わりました。

北陸の某町役場からの案件があると、当時映像教材を作成・配信する会社に勤務していた私に、お付き合いのあった塾長から連絡があったのです。その町の県立高校の生徒が減っており、定員割れとなると離れた市にある県立高校と統合になるのでこれを回避したいとの事でした。

過疎化が進む町は学校が無くなると人や物の流れが減り更に過疎化が進みます。町は制服代やバス代を補助していましたがあまり効果はなかったとの事です。そこで生徒が集まる学校にする為、大学進学率を上げようと考えたのです。地元には大きな国立大学があり、そこへの進学者を増やす事でイメージを向上させる目標を立てました。

県立高校なので県の教育委員会管轄。県の予算からとなると難しい条件をクリアしなくてはなりませんが、今回は町の予算を捻出する事で費用面は問題となりませんでした。更に町長自ら教育委員会と高校の間を取り持ってくださった事もありプロジェクトは順調にスタートしました。
とは言え対象となる高校に勤務する先生方には本プロジェクトを始めるにあたって、新たな業務をお願いする事になります。例え自分の働く高校の進学率を上げるものであったとしても企画のスタートは町ですから、先生方の協力をどこまで頂けるか不安でした。しかし地元国立大学への進学がその後、町に優秀な人材を残す可能性がある事。これは生徒数を増やす以上の地域貢献となる可能性がある事を感じ取られた先生方の全面的な協力を得ることができたのです。

我々は放課後にPC教室を開放して予備校系の映像教材を学習させました。いわゆる「校内予備校」で、自分が学習したい教科や単元を自由に選択できるスタイルです。
指導は全て本件を持ち込まれた塾長が行い、多数の教材よりどれを選択すべきかを生徒の個性や意欲から導き出し個々のプランを作成しました。
結果本プロジェクトは、例年の3倍以上の合格者を出すことができたのです。

教育系の予算だけでなく地方創生の予算を拡大解釈して教育に回す事、関係者全員が共通の目標を掲げ動き出す事で、教育による地方創生は可能だと思います。

現在ではこのプロジェクトはオンラインで行う事も充分可能です。オンラインだからこそ得られるデータの活用も更に効果を増す事でしょう。
職を変えた今、新たな試みで教育による地方創生に臨んでみたいと強く思っています。

Written by Kazuhiko Kyono