2022.08.16

メタバースの利用へと進化するeラーニングの課題

アスナの右隣に座るのは、猫妖精族特有の三角耳を生やした獣使いのシリカだ。ホロウインドウ上に表示された冬休みの宿題の数式を睨みながら、うーうーと唸り声を上げている。左隣では、黄緑色のポニーテールを結ったシルフの魔法戦士リーファが、同じく英語の長文に顔をしかめている。ソードアート・オンライン第7巻より

これはVRMMORPGを舞台とした小説「ソードアート・オンライン」第7巻冒頭のシーンです。離れた所に住んでいる友人達が「メタバース」を使ったゲームにログインして集まり、宿題をしています。距離に関係なく集まり、周囲の空間に好きなだけ仮想のウィンドウを表示して宿題を行う光景は目新しいですね。

メタバースはVRやXRをベースとしてこのような世界を現実にします。ですがそのためにはクリアしなければいけない問題点も数多くあります。

デジタル化が必須

まず紙や冊子の宿題はダメ。iPadの宿題アプリもダメです。なぜならVR空間には紙もiPadも持ち込めないからです。持ち込めるのはデータだけです。例えばWeb用のeラーニングであれば、メタバース内で稼働するブラウザが準備できれば利用可能です。

では今のeラーニングをメタバースに持ち込むと、これまで以上の教育効果を期待できるでしょうか。これも「NO」です

そもそもメタバースに「動画を視聴し、択一式の確認テストを受ける」というeラーニングを持ち込む意味はありません。現実世界で利用すれば十分だからです。ですから「教育×VR」で紹介したような、VRやXR技術を活用した教材が必須です。

視聴覚体験のみならず匂いや味、手触りなどの感覚も体験できればさらに良いです。センサーやデバイスを使って重さを実感できるなどのコンテンツもあれば、リアルの空間とほぼ同じ内容を仮想空間で体験できます。そうすれば何度も繰り返し実験ができるなど、さらに学習効果は増します。

どんなメタバース利用がありえるか

例えばメタバース内で机に向かい、ペーパーテストを受けてみます。そこにあるテスト用紙は紙のように見えて紙ではありません。デジタルペーパーとでもいうべき存在です。ですが紙と同様、めくったり裏返したりすることも可能です。

デジタルペーパーに表示された択一や穴埋問題は、eラーニングと同じく自動採点できます。ペンで書き込むと文字は筆跡データとして保存されると同時に、テキスト化もされます。テキスト化された文字は同じく自動採点の対象になりますし、学習活動履歴をすべて保存するBookrollで取れるデータはほぼすべて取れます。教育のICTを一気に進められる可能性もあるのです。 しかしそれにはメタバース上の「紙」を定義する、次世代規格が必要です。xAPIのような学習体験を取得するための規格では、まだまだ身体を動かした経歴などを事細かに記録するには力不足です。「ソードアート・オンライン」の世界を実現するには、データ規格など考えるべき事が山積しているのです。

Written by T.T.Yamada


学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
eラーニングシステム。PC、タブレット、スマホに対応