2020.08.28

学びのステップ

朝日新聞社と一緒に「e学び力」というeラーニングソフトを開発・展開していた、2007年の話です。
「これで学べば、学生はスキルが身につきますか?」
という質問を幾つかの大学から受けたことがあります。「eラーニング」だけで「身につくか」と問われれば、おそらくほとんどの学生に対しては「NO」という答えになるでしょう。

もう少し正確に表現してみましょう。能力獲得には幾つかの段階があります。能力開発の見地から言えば、「知る」「わかる」「できる」の3段階でしょう。場合によっては「教えられる」という4つ目が入る場合もあります。
ですが、我々の能力開発では、次に挙げる5段階を設定しています。それらは
「知る(気づく)」「わかる」「できる」「教えられる」「評価できる」
です。

図:能力開発の5段階

ある事柄について、人間は知らない状態からまず「気づき」「知る」という段階を迎えます。知らないものは、ずっと知らないままです。これが第1段階。

第2段階は「知った」状態から「わかる」状態への変化が求められます。本を読み、授業やセミナーを受け、自身の中に知識を蓄えていくことで、ある時「わかる」瞬間が訪れます。学習形態としてはインプットが中心となります。

第3段階は「わかった」状態から「できる」状態にならなければいけません。「できる」というのは、得た知識を使うことではじめて達成されます。「わかるとできるは違う」というのはまさにこのことで、インプットで知識を蓄えても、使えなければ意味がありません。十分なアウトプットが求められるのです。

この先はだんだん難しくなっていきます。第4段階は「他者に教えられるようになる」ことです。通常、他者に教えるには、教える内容の3倍は知っている必要があると言われます。実際に教え始めると「この手順ってどうして必要なんだろう?」など、疑問点が次から次へと湧いてきます。これを解消する努力をしない限り、満足に教えられるようにはなりません。「教科書を教える」と「教科書で教える」の違いはここに起因します。
また、クラスメイトに教える生徒の学力が伸びるのも、これが原因です。

そして最後の段階は「評価できる」です。教えたあとは、内容がキチンと伝わっているか、重要な項目が理解されているかをチェックする必要があります。その際、チェックすべきポイントがどこなのかを理解していなければ、的外れなテストを作ってしまいます。ポイントが理解できている人は良問をたくさん作れます。また、テストではありませんが、アンケートでもポイントを押さえたアンケートは「評価できる」レベルの人でなければ作成できません。

最初に戻りますが、「eラーニング」だけで5段階目までいくのは無理でしょう。どこまで行けるかは、コンテンツの設計と、受講者のモチベーションに依存します。
もちろん「できる」までは行けるかも知れません。でもその先の「評価できる」レベルにまで進めると最高ですね。


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