2021.04.24

国際規格 OneRoster, OpenBadge

これまでeラーニングの国際規格として、SCORM、LTIxAPI、cmi5を紹介してきました。これらはコンテンツ共有、コンテンツ制御、学習履歴の共通化に関わるしくみでした。
しかしシステム毎に受講者のIDが異なり、情報を一貫して見ることができなければ、これらの共有化を行っても受講者にはあまりメリットがありません。

今回はシステム間のID連携を進めるOneRosterと、学習結果としてのスキルを認定するOpen Badgeについて紹介します。

OneRosterは標準化団体のIMS Globalが策定し、主に学務情報システム(SIS)が管理する情報を学習支援システム(LMS)などのシステムで利用するためにIDを連携する国際標準規格です。

学校ではSISにクラス名簿(Class Roster)があり、LMSに授業の教材や課題(Resources)、成績情報(Gradebook Results)などが入っています。しかしクラス名簿はLMSにも登録が必要ですし、二重管理をしてしまうと様々な弊害が出ます。SISの情報をLMSから利用できるべきです。これはSISがLMSの情報を利用する際にも言えることです。

OneRosterはこの問題をクリアします。ですが校内の情報連携だけに留まると、校種が変わった場合(小学校から中学校へ進学したなど)、連携が途切れてしまいます。そこまで対応するには、受講者のIDを国レベルで統一する必要があります。2020年に文部科学省が
生徒情報にマイナンバーを活用
という答申を出したのは、ID統一に使えるのがマイナンバーしかないからです。発想は良いのですが、成績や習得スキルの開示は
「国民が自分で開示したいもののみとする」
などの制限をしっかりと設ける必要があります。成績情報はセンシティブな個人情報であり、決して国が自由に閲覧し、利用して良いものではないからです。そしてこれがしっかりとできるようになると、次のOpen Badgeが生きてきます。これは国民にとって大きなメリットがあります。

Open Badgeは、個人の保有スキルを認定するものです。欧米系の企業では
「仕事に対して人が割り当てられる」
というジョブ型雇用が主流です。つまり、その仕事(若しくはプロジェクト)が終了した場合には、契約終了となります。その際、同じ社内の他のプロジェクトから声がかかる場合もあるでしょうし、待遇の良い仕事を求めて自分から他社に移籍する(要は転職する)こともあります。

逆に言えば、雇用する側はその人物が求めているスキルを保有しているかどうかが最大の関心事ですから、それを何らかの形で見える化する必要があります。

Open Badgeはスキル認定証をIMS Globalの下で国際標準規格にしたものです。日本では一般社団法人オープンバッジ・ネットワークがシステムを提供しています。このシステムを利用して、大学や企業、各種検定団体が認定証を、卒業または修了した人に対してデジタルで発行できるようになっています。
今後は学校での単元理解に対して、これに似たような認定証を発行していくことになるかもしれません。マイナンバーを活用するかどうかは置いといて。

Written by T.T.Yamada