2021.07.16

プロデューサー教育 ~私の原点Ⅱ~

前回の続きになります。

関西でプロデューサー教育を行う大学院の立ち上げに参加した私は、地域で活躍するプロデューサーの肩書を持つ方々に取材や教鞭をとっていただく依頼をする事からはじめました。その活動の中でお会いした関西で唯一のプロデューサー論の研究者だった某大学の教授に大学院のコンセプトを伝え協力を仰ぎました。快くお引き受けくださった先生はまずこう言われたのです。

「ゼミ生と君たち事務方の人間とで手分けして関西にいる200名の著名なプロデューサー(又は起業家)に直撃取材するぞ!」

某大学で担当されていたゼミ生の手伝いもあり200名取材は滞りなく終了。そのヒアリング結果で私たちを悩ませたのが、多くのプロデューサーに共通するとある項目でした。

それは最も重要な、自分のアイデアを商品や番組などの形にするために必要なものは、知識やテクニック、人脈ではなく、そのアイデアを具現化させたいと言う強烈な想いと行動力にあることでした。そしてそれは後天的に教育やOJTなどで得たものではないということでした。

取材のヒアリングポイントの中には幼いころの生活や教育環境の項目がありました。その回答には我々とは少し異なる経験談が多数ありました。

幼少期にお父様から三国志演義の本を渡され読むように言われたとある起業家の話。特撮ヒーローに熱中していた私と同年齢の時に彼は三国志演義を読破し、父親と英雄論を熱く語り合うようになります。そんな彼に父親はこう質問します。

「誰が一番偉いと思う?」

劉備玄徳であると答えると父親はもう一度最初から読むように言います。読み直した後、彼は諸葛亮であると答えるとまた読み直しの命令が。

三国志演義では蜀を中心に物語が進むため劉備玄徳や諸葛亮といった人物に憧れを抱きがちです。お父様は最終的にどの国が勝ち残ったのか、敗れた国は何が原因だったのか。一つの戦いの描写や結果だけを見ず、三国の最終結果を見て統一に最も貢献した人物は誰かを考えなさいと幼い彼に伝えたのだそうです。本質を見極めよと。

上記は極端な例かも知れませんが、幼いころのユニークなエピソードが多くのプロデューサーから語られました。それらを検証した結果、パーソナリティが形成される感受性の豊かな時期をどう過ごしたかが重要だと認識しました。

ユニークな経験、それらは幼き日の彼らに悩みとそれに向き合い考える時間を与えます。そしてそれを解決するべく動く。想いは強ければ強いほど積極的に行動するのです。

学校で知識、テクニックは教えられます。
人脈もスタッフや教員のネットワーク共有で賄えるかも知れません。
お金の集め方は企画やプレゼン次第と考えれば教えられる範囲内でしょう。
しかし過去要因と環境要因は学校では与えられません。

自分の浅はかさを思い知り、学びにおけるタイミングを強く意識するようになったのがこの頃でした。

もう一回続きます。

Written by S.Seki


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