2021.12.10

大人こそが迷う日本語

私が個人的に楽しんでいるゲームで、最近「地固め」というスキルが強い、という話題がありました。
まあ、ゲームの話は余談なのですが、この「地固め」という言葉、皆さんはひらがなで書くと、どのように書きますか?「じがため」「ぢがため」どちらでしょう。

「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」。使い分けは小学校2年生の国語で習います。
こどものころは疑問に思わなくても、漢字の知識を得たことで、「大人こそが迷うもの」に思われます。

話を戻すと、この場合は「じがため」が正解です。
「地」の音読みは「チ」。それが濁った「ヂ」が正しいのでは?と思うかもしれません。
その違和感は、この場合の「正しさ」が成り立ちや由来・言葉の変化からくるものではなく、国が決めた定義だからです。

文化庁が公開している「内閣告示・内閣訓令」の中。「現代仮名遣い 本文 第2(表記の慣習による特例)」に書かれています。

次のような語は,「ぢ」「づ」を用いて書く。
(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」
(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」

簡単に説明すると、(1)は「ちぢむ」「つづく」のように、「ち」や「つ」を連続で使用する場合。(2)は、「はなぢ」→「鼻+血」、「みかづき」→「三日+月」のように、他の言葉との接続の関係で濁ったもので、どちらも主に「読みづらさの解消」のために生じるものです。

ここで気づいて欲しいのが、これが「特例」である点。
つまり、日本語において、「特別なことがない限り、『ぢ』『づ』は使わない」方針なのです。

それを踏まえれば、「地固め」は1文字目が「地」なので、(1)(2)のいずれでもない、ということは分かります。
しかし「布地」なら?これは(2)でしょ?と思いませんか?

その答えが、同項目の [注意] 欄にありました。

次のような語の中の「じ」「ず」は,漢字の音読みでもともと濁っているものであって,上記(1) ,(2)のいずれにもあたらず,「じ」「ず」を用いて書く。
例 じめん(地面) ぬのじ(布地)
  ずが(図画) りゃくず(略図)

つまり、「地」「図」は元々「zi」「zu」という「読み」であり、意味で振り分けられないので、特例ではない「じ」「ず」にします、ということです。
だから、辞書の「地」の音読みは「チ」「ジ」となっていて、「ヂ」は書かれていません。

他にも、「世界中」「稲妻」のような例もあり、要約すると「(2)に当てはまるが、一般に一語として認識されており、分割しづらいものは『ぢ』『づ』を使ってもよい」と書かれています。
あくまで「ぢ」「づ」でもよい、という方針です。

しかし、我々の業界では、テキスト・問題文・収録音声まで、隅々で「正しさ」が求められます。
NHKが「早急(そうきゅう/さっきゅう)」を、必ず「そうきゅう」と読ませる方針であるように、「どちらでもよいこと」に自分なり/自社なりの「正しさ」を定義する必要性を感じます。

Witten by Y.Nakai


タブレット・PCで自宅で手軽に学習できる
小~高各5教科対応オンラインドリルはコチラ