2021.10.29

「やる気」を考える ②

意欲は、心理学においては「動機づけ」の一部として扱われています。今回は、「内発的動機づけ」「外発的動機づけ」を取りあげます。

「内発的動機づけ」とは、その行動自体が目的である動機づけであるのに対し、「外発的動機づけ」は行動と目的が別にできる動機づけを意味します。学習の場面で例を挙げると、学習自体が楽しくて、学ぶこと自体を目的に取り組んでいる場合は、学習者は内発的に動機づけられている状態と言えます。一方、「良い成績を取れば、ご褒美がもらえる」「悪い成績ならば、罰がある」といった条件下の学習は、目的がご褒美をもらうこと、ないしは罰を避けることにあるため、外発的に動機づけられた状態と言えます。

外発的動機づけに関しては、「アンダーマイニング効果」が特に有名です。元々お絵描きが好きな子どもに物質的なご褒美、つまり外的な報酬を条件にお絵描きをさせ、実際に報酬を与えてしまうと、これをなくした場合に元々子どもにあった絵を描こうとする内発的動機づけを弱らせる効果が生じるというものです。このような、報酬に釣られての他動的な学習ではなく、内発的な学習こそが自発的な学習に結びつくと考えられたため、教育現場においては内発的動機づけが重視されてきました。

では、外発的動機づけは全て学習者に悪影響かと言うと、そんなことはありません。外的な報酬が内発的動機づけを高める例に、「エンハンシング効果」があります。エンハンシング効果とは、称賛という言語的報酬により学習者自身の有能性の認知が高まり、内発的動機づけが高まるという効果です。「すごいね!」等と褒められた結果、「自分はできるんだ!」と思えてやる気が高まった経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。内発的動機づけには、3つの心理的欲求(「自律性」「有能性」「関係性」)を充足させることが必要と考えられていますが、「将来の夢を叶えるために勉強する」といった動機づけは、行動の意義を理解した、自律性のある外発的動機づけと言えます。

結局のところ、内発的動機づけと外発的動機づけは単純に対立するものではなく連続性のあるもので、外的な報酬が動機づけを高めるかどうかも条件次第だと考えられます。よって、eラーニング制作において、学習者の内発的動機づけを高める工夫が重要となるのは勿論ですが、称賛や激励等の外的な報酬、外発的動機づけを、学習者一人ひとりの状況を鑑みて工夫することも有効だと考えられるでしょう。

Written by H.Owa


ナスピアのeラーニングシステム「e-GOAL」では、学習者一人ひとりの学習結果に応じたフィードバックとなる帳票の作成機能を実装しています。