2022.01.21
eラーニング系の企業で働いていると中小企業からの相談もやって来ます。新入社員の研修という話もあるにはあるのですが、
「職人の技を新人に伝えるにはどうしたら良いでしょう?」
というものも入ってきます。大抵は工場などを持つ「もの作り企業」です。
どこの企業も人手不足は同じです。そして腕の良い職人に支えられている企業に関しては、職人の引退、若手が入ってこない、入ってきてもスキルアップがなかなか追いつかないという問題に直面しています。
理由として聞かされるのは
「後進に指導をするという経験をしたことがないので、伝え方が分からない」
「職人は他人と話をするのが苦手な人が多い」
などです。自分も先達から教えられたわけではなく、その技を見て「盗む」という経験を経て今のスキルに至っているため、教え方がわからない。「なるほど」と頷かざるを得ません。そもそも新人の時に何を苦労したのかなど覚えていない可能性もあります。
とはいえこのままでは先細っていくのも事実であるため、技の継承は急務です。その際に筆者がお薦めしているのは
「職人の作業の様子を動画に撮ること」
「その動画を見せて、何をしているのか職人に質問して答えてもらうこと」
です。質問は質問慣れした素人がやった方が良いです。
過去に筆者が行ったのは介護現場での実際の介護の様子についてでした。
「何故この位置に立つんですか?」
「ここに手を添えるのは体を支えるためですか?」
など、素人の質問または素人の考えが正しいかを問う質問などをぶつけます。動画に映っている側の人々にとっては当たり前の事なのかも知れませんが、素人にはそこからしてわからないものなどいくらでもあります。これは前回のコラムでも紹介した「レベル」にも通じる話です。
ただでさえ日本人は質問ベタである上、若手は
「こんな質問したら怒られないかな?」
と萎縮してなかなか質問できません。その点、筆者は業界の関係者ではありませんし、ずぶの素人ですので知らなくても当然です。ですから気兼ねなく質問しますし、職人さんも仕事の一環だと聞かされていればキチンと答えていただけます。場合によっては手元をアップにした動画を追加撮影させてもらう事もできます。
一方、職人さん側も
「新人に何から教えたら良いのかわからない」
わけですから、筆者のような素人の質問に答えていれば、新人が苦労する点やもしかしたらそもそも知識すら無いかもしれない部分を把握していくことができます。
作業を撮影した動画に職人さんの解説音声が付いていれば、新人であっても何をしているのか、どの様にしたら良いのかを動画で事前に学習する事ができます。もちろん動画だけですべて身につくわけではありませんので、その後は実地で腕を磨く必要はあります。ですが、こういう教材があるのと無いのとでは、その後の成長が大きく変わってくるのです。
Written by T.T.Yamada
学習ログを取ることで、弱点分析や学習態度を分析する
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